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臨床での活用漢方で治そう

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漢方の基礎概念について

証の把握 虚証と実証

 われわれ人間は自然環境の中で生活をしています。古典ではこの自然環境を風、寒、暑、湿、燥、火と考え、これを六気と言っていました。しかし、現代では温度や湿度のほかに気圧、電磁気、重力などが関係していることがわかってきています。たとえば宇宙空間に出ることにより重力が、携帯電話やコンピュータの使用で電磁気が人間に作用してきたことがわかってきました。いずれにせよ外界から人間はいろいろな作用を受けて生活をしています。そして人間は持って生まれた生命力(先天の気)を利用し、さらに食べ物を消化吸収(後天の気)して生命を維持しながら外界の影響を受けて成長し老化していきます。この過程で徐々にたくましくなっていく人、弱々しい人などそれぞれ体型や個性が形成されていきます。
 この自然環境の中で生活して行く過程で形成される生命体の状態を虚実という尺度で分類します。したがって虚実は自然環境の関数で表現できると思います。また生命体は時間・空間の変化の中で内部の秩序を変化対応させながら生命を営んでいますので、虚実は固定したものではなく、一時たりとも同じ状態ではありません。このように虚実を捉えた上で、虚実を簡単に表現すると実証はガッチリして筋肉質で疲れにくく体力がある傾向になります。自然環境の変化に対して影響を受けにくくなります。一方、虚証はやせ型で弱々しく、疲れやすく体力がない傾向にあります。自然環境の変化に影響を受けやすく温度や湿度など気候の変化で体調を崩す傾向があります。

証の把握 陰証と陽証

 自然環境の中で生活することによって形成されるのが、虚証と実証でした。生命体は、内部の秩序を変化し対応させながら生命を営み、さらにこの変化のある時点で体内に有害物質や病原物質(外邪)が侵入することもあります。そして外邪の勢いと外邪からの影響に対して正常な状態に回復させようとする生体防御反応が働きます。このときに生命体が対処する反応(生体防御反応)に違いが生じ、さまざまな経過をとります。たとえば、実証の人は生体防御反応が強いため症状が激しく現れたり、あるいは症状が現れる前に軽快したります。これを陽証の反応と言います。一方、虚証の人は生体防御反応が乏しいため症状が現れにくくなります。これを陰証の反応と言います。ここで注意することは症状が出ないのは陽証の反応と陰証の反応の両方があることです。たとえば、同じインフルエンザウィルスが原因でも高熱になる場合と、熱の出ない場合があります。

 実際の処方を選択する際には生体防御反応の結果として出現した症状に対して陽証の反応なのか陰証の反応なのかを判断して漢方処方を決定することが大事です。

表.陰陽虚実の成因と状態
  成因 状態
実証 自然環境の中でのどのように生命体が変化していくか がっちりしている、変化に対して抵抗力が強い、活動的
虚証 すんなりでかぼそい、変化に対して抵抗力が弱い、静的
陽証 種々の有害物質が生命体に侵入してきたときに現す変化 活動性の反応で病状が発揚的、熱感が主体、脈浮、節々が痛くなる
陰証 非活動性の反応で病気の勢力が弱くてなかなか現れにくい、寒気が主体、脈沈