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品質管理への取り組み (QUALITY CONTROL)
生薬及びエキス製剤の品質確保への取り組み

高品質の製品を安定供給するために

漢方薬は複数の生薬により構成されている多成分系で、その臨床効果は、個々の生薬の含有成分の複合作用または相乗作用としてあらわれます。個々の生薬にはそれぞれ特有の成分が含まれており、これらの含有量を把握することはエキス製剤の品質管理には不可欠です。
クラシエは、一定品質の製品を提供するためにもこれら多種多彩な成分を分析し、品質の向上と安定供給を目指しています。今回は品質評価の一つとして、多成分系の評価方法であるパターン分析を取り上げ、クラシエの品質確保への取り組みを紹介します。

生薬やエキス製剤の成分分析を行い、品質の安定確保に努めています。

生薬にはそれぞれ様々な成分が含まれています。これらの成分は必ずしも薬効を代表する成分とは限りませんが、漢方薬の臨床効果はこれら成分の複合作用または相乗作用としてあらわれます。つまり、特定の成分の含有量を把握することだけではエキス製剤の品質管理としては不十分であり、様々な成分が常に一定の範囲内で含有されていることが高品質の製品を提供する上で非常に重要であると考えています。
そうしたことから、クラシエでは、多成分系の品質評価法の一つとして含有成分のパターン分析を実施しています。

三次元PDA(Photo Diode Array)パターン分析

PDA検出器と質量分析計(MS)
PDA検出器と質量分析計(MS)

各生薬成分のUV吸収スペクトルを利用した分析方法で選択性に優れた分析能力を有しています。製造時期が異なっても同じ分析パターンが得られることで、品質が安定していることが保証されます。逆に言えば、分析パターンが異なれば、それは品質のバラツキを意味しています。

防風通聖散料エキス

防風通聖散料エキスのPDAパターン分析結果

【防風通聖散料エキスのPDAパターン分析結果】
各ロットのエキスが示すクロマトグラムは、ほぼ同様のパターンであることが確認できる。

三次元PDAパターン分析の弱点を補うMSパターン分析の必要性について

品質評価の一つであるPDA検出器による三次元(3D-)HPLC分析法は、検出器の特性上、UV吸収を持たないか、あるいは吸収強度が低い成分については検出が難しく、これらが品質管理上重要な成分でありながら、3D-クロマトグラム上に現れないなどの点で十分な評価ができませんでした。
PDA検出が困難な成分についても評価ができるように、質量分析計(MS:Mass Spectrometer)を用いて新たなパターン分析法への応用を検討し、この必要性について学会発表を行いました。

PDA及びMSを併用した漢方処方の品質評価への応用

【目 的】
PDA検出が困難な成分についても評価ができるように、質量分析計(MS)を用いて新たなパターン分析法への応用を検討したので報告する。
【結 果】
補中益気湯を例にとり、ニンジンあるいはサイコを抜いた処方を作製し、PDAパターン分析及びMSパターン分析を比較した。その結果、PDAではパターンに差が認められないのに対し、MSでは差が明瞭に確認できた。

補中益気湯エキスのPDA及びMSパターンクロマトグラム

【まとめ】

● 漢方処方中にはニンジン由来のジンセノシド類やサイコ由来のサイコサポニン類など薬効上重要な成分が存在するが、PDAクロマトグラムで顕著に観測できなかったこれらの成分についてもMSを用いることにより検出が可能となった。

● 処方中の種々の成分が選択的に観測できることから、生薬から最終製品までの各製造工程における挙動の把握に応用できると考える。

● 以上のように、PDAにMSを併用することで、より精度の高い品質管理が可能となるものと考える。

MS(Mass Spectrometer)パターン分析

前述のPDA分析では見えてこなかったUV吸収の弱い成分などは、PDAにMS検出器を追加することにより、一度の分析で多くの成分を同時に捕捉することが可能になります。
また、この分析法は、検出を質量数でモニターすることから、特異性が高く、使用生薬の成分パターンとしても把握することが可能で、精度の高い品質管理が実施できるようになりました。

補中益気湯エキス

補中益気湯エキスのPDA及びMSパターン分析結果

【補中益気湯エキスのPDA及びMSパターン分析結果】
PDA検出でのパターン分析では、UV吸収の強い成分などは明瞭に確認することができ、成分固有のパターンとして現れているが、一部の生薬(カンゾウ、チンピ及びショウマなど)の成分が確認できている程度で、その他、ニンジンやサイコ成分など、UV吸収の弱い成分や含量の少ない成分などは確認できない。
これに対し、MS検出でのパターン分析では、質量数による検出であることから、UV吸収の強度に影響されることなく,選択的に成分ピークとして捉えることが可能となる。