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臨床での活用漢方で治そう

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アトピー性皮膚炎の漢方治療

アトピー性皮膚炎の病態

 皮膚病は皮膚だけの病気でしょうか。確かに、けがによる傷や火傷は皮膚そのものの病気と言えますが、症状が出ている場所が直接の原因ではないことがあります。例えば黄疸の場合は肝臓や胆嚢の異常であり、黄疸の治療は原疾患を治療する必要があります。アトピー性皮膚炎(アトピー)も同様です。皮膚科学会のガイドラインによると、アトピーの病態は角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い,多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる慢性に経過する炎症と掻痒とあります。つまり、外面のバリアーの異常とアレルギー反応を起こす体質や内面の異常の二つの病態に分けることができます。


外面のバリアーの異常  体質や内面の異常

処方の実際

皮膚表面の状態からみた処方
  1. 1. 白虎加人参湯
    乾性の湿疹で強いかゆみやほてりがある場合
  2. 2. 当帰飲子
    乾性の湿疹で患部の赤みが少なく冷え症の場合
  3. 3. 黄連解毒湯
    赤みとかゆみがある場合
  4. 4. 荊芥連翹湯
    慢性化して皮膚が黒ずみ、鼻炎を伴うなどの場合
  5. 5. 温清飲
    皮膚に赤い所と黒ずんだ所が混在し熱感がある場合を使い分けます。
体質や内面の異常からみた処方
  1. 補中益気湯
     つぎに内面との問題を考えます。漢方では内臓を五臓六腑に分け、肝・心・脾・肺・腎を五臓、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦を六腑に分けています。五臓と六腑は関連があり肺と大腸は相互関係を持ちます。また皮膚呼吸と肺呼吸の点から皮膚と肺は関係をもちます。さらに皮膚や大腸を含めた消化管と肺は外界と接する点からも相互に関係を持ちます。アトピーに限らず皮膚の異常を改善するためには消化管を健全にする考えが古くからありました。その中で脾虚には内臓を働かせる力を補う補中益気湯などを使うと皮膚病が改善する方法がありました。補気薬を使うと確かに皮膚の状態は改善しますが、理由は今までわかりませんでした。しかし、最近の研究で脾虚の改善と皮膚の改善の関係が徐々にわかってきました。
  2. 補中益気湯の働き
     補気薬の代表として補中益気湯があります。補中益気湯は腸管免疫機能を高め、Th1/Th2バランスを改善することが解明されてきました。つまりTh1細胞を活性化することで異常亢進状態のTh2細胞を抑制し、さらにIgE抗体産生を低下させる結果、アレルギー反応を抑制します。古くから何となく使用していた処方のメカニズムが現代医学で証明されてきた一例です。
     アトピーの治療の場合、外面(皮膚)の治療だけでは根治しない症例でも、内面(消化管)の治療を併用すると軽快することがあります。特に難治性のアトピーでは消化管の健全化は必須といえます。