日本の夏は温度・湿度とも高いため、この暑さと湿度に何とか抵抗しようと生体は熱を逃がして体温を一定に保とうとする防衛本能が働きます。この時必要以上のエネルギーを消費しかなりの負担に耐えることになります。とくに冷房の効いた室内と、高温・多湿の屋外を出たり入ったりで、温度差が5℃以上になると体は強いストレスを受けます。
このような状態が長く続くと、徐々に自律神経の働きが鈍化し体温調節をうまくコントロールできなくなっていきます。すると熱をうまく下げられずに熱が出たり、水分の循環がうまくいかずに胃腸の働きが弱まり食欲もなくだるい‥といった内臓への変調や、頭痛・脱力・動悸・頻脈等体全体への変調になったりします。さらにクーラーなどで人工的に熱を奪われて体のバランスを崩し、倦怠感・腰痛・肩こり・手足の冷えしびれなどの症状を伴う、いわゆる『冷房病』にかかります。また、猛暑の中、冷たいものを摂るようになり、急激に温度の低いものが消化管に入ると消化・吸収がうまくいかなくなり、消化管内の消化酵素の働きも低下し免疫能の低下になります。
このように夏ばては自律神経のバランスの崩れや消化管の機能低下による消化吸収と食欲不振で必要な栄養素が不足することで様々な症状が現れてきます。この問題を改善するためには、環境を快適にするのはもちろんですが、消化管の機能の改善と自律神経のバランスの改善が必要になってきます。また、夏ばての症状は夏の期間だけではなく少し遅れて涼しくなった初秋に生じることもあり、この時期に自律神経失調症のような症状が出る場合には夏ばてと考えて対処することが望ましいと考えます。
漢方薬での夏ばて対策としてはおもに消化管の蠕動運動を改善し副交感神経を活発にすることで自律神経のリズムを改善したり、水分代謝を改善したりするような漢方処方を選択していきます。以下にその処方を挙げて検討します。
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