漢方では女性のからだは7年の周期で変化していくと言われています。西洋医学でも7×7=49歳の前後5年の10年間を更年期といい、この期間の症状を更年期障害といいます。更年期障害は、はっきりとした原因が見つからないのに「あちこち具合が悪い」という症状の訴えで、のぼせや動悸、発汗、めまい等自律神経失調症と密接な関係があります。
現代生理学では「更年期障害」の直接的要因を女性ホルモンの減少とし、ホルモン補充療法を行います。一方、東洋医学では閉経期というのはそれまで月に一回、ある量の血液を体外に排出していたリズムが狂ってくるため、この女性の症状を「血の道症」と呼んでいました。漢方治療では、ホルモンが減少するのは自然の摂理と考えているので西洋薬治療で行われるホルモンの補充療法は行ないません。この期間の症状を改善するために症状に応じて次のような漢方薬で対処します。
最近では「男性更年期」も認識されはじめています。男性の場合は8年の周期で変化していきます。8×7=56歳前後を男性更年期といい、女性と同様男性ホルモンの低下が原因と考えられています。しかし女性の閉経の様に劇的な変化ではないので症状に気づきにくいこともあります。男性ホルモンの減少による更年期症状の場合は主に補腎薬を使います。さらに特に男性の場合、社会的な地位や多忙な仕事、さらに地位や環境の変化などから生じる「うつ」状態を伴う心因的な更年期障害もしばしばあります。女性に比べ男性の場合は社会的要因が大きな比重を占めるとされる所以であります。この場合は疲労感の改善に補剤やうつ状態の改善をする抗気うつ剤(気剤)の処方を選択します。
男女ともに自然に発生する更年期障害の他に人為的に生じる更年期様症状があります。(更年期前に婦人科系の異常により卵巣を摘出した場合。)また男性の場合は前立腺癌の治療によるものがあり、女性ホルモンを使用後、女性ホルモンの低下とともに女性更年期障害と同じ様な症状が出現します。いずれの場合も女性更年期障害に用いた処方が使えます。
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