漢方基礎講座漢方の診断法
一覧ページに戻る
病気の位置、進展、性質、勢いの鑑別
表証と裏証・・・病位判断
表裏というのは体の位置を示すとされます。浅表上部を「表」、深下部や内臓を「裏」としています。
- 病気の位置(病位)による表裏の区分
病気が体のどこの部分にあるのかにより表裏の証を判断します。具体的には、「表」は、顎から頭、首筋、背、腰にかけてで、「裏」は、首から胸、腹にかけて、口、咽喉、食道、胃と続く消化管、循環器、その他、内臓のすべてとされます。つまり、病気の部位が表にあれば「表証」、裏にあれば「裏証」ということになります。
- 病状の進み方による表裏の区分
病気の進み方によってその位置も変わってきます。漢方では「証」を静態的、固定的なものとは見ないで、動態的、流動的なものと見ています。つまり、一般に病気は表から裏へと進み、陽は上へ、外へと向い、陰は下へ、内へと向かうとの考え方があります。例えば風邪症候群での一例として、菌の侵入とともに咽喉部の炎症が起こり、咳や痰が出て、お腹にきて食欲不振を引起こす。といったような考え方です。
- 表と裏と半表半裏
表から裏へと向かう段階の経過点をとらえて半表半裏としており、部位としては胸部から胸脇部(横隔膜付近)を指します。半表半裏も基本的には裏とされます。別々の部位に表裏ともにある場合は裏と判断し、裏証を治していくと自然に表証も治るものとしています。例えば、生理不順で痛みが強く便秘をする(裏証)、また、頭が重い、肩がこる(表証)といった場合には、生理不順や便秘を治せば頭痛、肩こりもよくなるということです。
- 急性、慢性による表裏の区分
半表半裏の考え方は慢性疾患の場合に当てはまります。また、裏に症状があっても表証の急性症状を急いで治す必要がある場合は、まず、表証として扱い、後でゆっくり裏を治して行きます。
熱証と寒性・・・病性判断
病気の性質や症状の現われ方がどうかによって「熱」「寒」に分類します。例えば、ある患者さんの機能が異常亢進していたり、炎症症状がある場合は「熱証」、反対に、機能が異常衰退していたり、アトニー的症状があれば「寒証」とされます。「熱証」「寒証」は、体質と症状をひっくるめた、その時点でのその患者さんの病態に対する分類とされています。
- 顔色による熱寒の区分
熱証は顔色が赤い、あるいは黄色で、寒証は顔色が白いかどす黒いとされています。
黄色いということは、それだけで黄疸であることが分り、肝臓の炎症(裏)の可能性が高く裏熱証と判断されます。また、黄色い顔色であっても表証の症状があれば表熱証であり、表証の治療とされますが、はっきりとしない場合は裏熱証として治療します。
- 熱感と悪寒による熱寒の区分
熱感が悪寒より強ければ熱証(表熱)、悪寒が強ければ寒証(表寒)とされます。
- 口渇による熱寒の区分
口渇が強い場合は「熱証」と判断しますが、口渇がなかったり、少しはあるといった程度であれば熱証とも寒証とも言えないとされます。
- 飲料に対する好みによる熱寒の区分
冬でも冷たい飲み物の方が好きだというのは「熱証」、夏でも温かいほうが好きだというのは「寒証」とされます。但し室内の冷暖房など人工的なものに左右されない本質的な好みであることが大切です。
- 冷暖房の好みによる熱寒の区分
冷房はどうしても苦手という人は「寒証」で、暖房はのぼせて気分が悪くなるから苦手という人は「熱証」とされます。
実証と虚証・・・病勢判断
漢方医学では、病気を正気(からだの抵抗力)と邪気(病毒の破壊力)との戦いであると考え、正気が衰えていると、弱い邪気であっても負けて、病気になります。こういった状態を「虚証」といい、これに対して、正気が十分に強ければ、弱い邪気くらいでは、病気にならないが、強い邪気に会うと正気と邪気が激しく戦い病気になる。こういった状態を「実証」といいます。つまり、病気の勢いに対する抵抗力の強さによって「実証」か「虚証」に分けられます。
注)漢方では、生体内の必要物質や生体機能が不足・低下した状態を「虚証」、量の過剰や停滞、機能の過亢進状態を「実証」としています。
腹診、脈診、舌診の基礎
腹診とは、患者さんの腹部にあらわれた異常(内臓器官の異常など)やそれを改善する処方を知る決め手であり、腹形、腹壁の厚薄、腹部の動悸、硬軟、弾力の有無、胃の振水音、腹直筋の拘攣などを調べます。虚実証の判定のみならず、方剤との関係が分かり易く重要な診断法とされています。
脈診は、西洋医学のそれと違い、非常に精細に区分されているのが特徴です。表裏、熱寒、虚実を判定する重要な診断法とされています。
舌診は望診の一つで、舌質と舌苔に分けて観察します。舌質は腫大があるか、色や光沢はどうかなどを診ます。舌苔は色や光沢、湿り具合などを診ます。舌診から、虚実、寒熱、血の異常、水の異常などの情報が得られます。