漢方医学の治療では、同じ症状、疾患であっても個人の体質や状態によって証が異なり、治療法(薬)も異なります(これを同病異治といいます)。例えば、不眠の症状があっても青白い顔で虚弱なタイプと赤ら顔でがっしりしたタイプとではバランスの崩れ方が全く異なります。すなわち証が異なるわけです。不眠という一つの症状のほか、頭が重い、イライラする、憂うつである、肩がこる、便秘をする、手足が冷えるなどの種々の症状や暑がりか寒がりか、汗かきかそうでないか、脂肪質か筋肉質かなどの体質的なものによって個々人の証が決定されます。
一般に病気にかかった場合の多くは、一時的又は継続的な緩解を目的とする対症療法か、治癒・根治を目的とした原因療法かの選択が行われます。漢方医学では、前者を標治といい、後者を本治といいます。一般に証の決定では、表面にあらわれている症状の他、個人の体質などを考慮していることから、根本的な治療と主症状を緩解させる標治を同時におこなっていく場合が多いと言われています。
四診とは、漢方医学における診断方法とその手順で、陰陽のバランスの崩れ具合を、表証か裏証か、熱証か寒証か、実証か虚証かなどに分類する手法です。
望診・聞診・問診・切診の四つの診断方法を言います。また、その診断の優先順位としては、望診>聞診>問診>切診とされており、部分よりも全体を優先することを原則としています。
望診とは、視覚的に診察する診断方法です。患者さんの顔色はもちろん、精神状態、皮膚の状態、挙錯・動作まで診断の対象とします。また、舌の状態や排泄物の観察(例えば痰の色)なども望診の一部とされています。
聞診とは、医師の聴覚と嗅覚によって、患者さんの発する声、咳、においなどで情報を察知する診断方法です。
問診とは、患者さんからの訴えを聞き、また医師から質問して、対話によって情報を把握する診断方法です。
切診とは、患者さんのからだに直接触れて診断する方法で、腹診、脈診が主なものです。
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