一見古めかしい印象を受けますが、陰気・陽気、陰イオン・陽イオン、陰極・陽極などという言葉は、現代科学の世界でも用いられています。古代中国人は、すべての事象を陰と陽の相対立する二つに分けて捉え、自然界の陰と陽の調和がとれていれば平和であり、心身の陰と陽のバランスが保たれていれば健康状態が良いと考えていました。逆に体の中で陰陽のバランスが崩れると病気になると考え、その治療は陰陽のバランスを取り戻すことに主眼をおきます。漢方医学がバランスの医学と呼ばれる所以です。
陽は……明るいもの、上にあるもの、上に昇るもの、発散するもの、温かいもの、動的なもの、積極的なもの⇒精神的なもの、機能的なもの、無形のものとされ、陰は……暗いもの、下にあるもの、下に降りるもの、収斂するもの、冷たいもの、静的なもの、消極的なもの⇒肉体的なもの、器質的なもの、有形のものとされています。
人体に疾病を発生させる原因は、内因、外因、病理的産物の三つに分けられるとしています。
五臓は、気・血・水(津液)の生成や代謝を行うところとされており、肝・心・脾・肺・腎に分けられています。
人体は陽気である気と陰液である血・水(津液)から成り立っていると言う考えです。
気とは、体内を流れるエネルギーとされ、人間が生命活動を営むための生理機能であり、 生命の根源とされています。気には、次の作用があります。
血とは、気の作用により血脈中を絶えず循環している赤い有形の物質とされています (単に血液や赤血球を指すのではありません)。血には、次の作用があります。
津液(水)とは、体内すべての生理的な水液の総称(涙液、消化液、唾液、汗、尿、関節液など)とされています。津液には、次の作用があります。
漢方医学がバランスの医学と言われることについては、漢方の特徴でも触れていますが、生体内の陰陽バランスが崩れることによって病気が発生すると考えます。漢方医学の診断と治療で重要とされるのは、そのバランスがどのように崩れているのかを把握することであり、そのアンバランスさをとらえて「証」の判定を行います。
「証」が決定されれば、どのようにしたら回復するのか、その為にどの方剤を患者に与えれば良いのかが決まってきます。
「証」については、病気の位置をあらわす「表証・裏証」、病気の性質をあらわす「熱証・寒証」、病気の勢いをあらわす「実証・虚証」というように陰陽分類がなされます。通常の診断は、「表証」か「裏証」か、次に「熱証」か「寒証」か、そして「実証」か「虚証」かの順に進められます。
この3項目について分類していくと、結局、「証」の組合わせとしては8つできます。つまり、「表熱実」・「表熱虚」・「表寒実」・「表寒虚」・「裏熱実」・「裏熱虚」・「裏寒実」・「裏寒虚」の8つです。これを八綱分類といいます。
注)本来、八綱とは、表・裏・寒・熱・虚・実・陰・陽の8つの綱領を指しますが、「陰証」「陽証」に
ついては、証全体に通じる総括的な分類であり、「表証」「裏証」「寒証」「熱証」「虚証」「実証」
の6つの証それぞれに陰か陽かがあてはまります。すなわち、表証、熱証、実証はいずれも陽証
であり、裏証、寒証、虚証はすべて陰証になります。
したがって、陽証と陰証の2つの証と、他の6つの証を同列に並べて八綱とするのは臨床実態に
そぐわないと考えられることから、6つの証の組み合わせ(2の3乗=8)を八綱分類と呼んでいます
漢方を知る
漢方処方を学ぶ(会員コンテンツ)
臨床での活用
漢方基礎講座
解説コンテンツ